加藤農園興ちゃんちの梨は日本一の熟成梨。加藤農園が丁寧に大切にしている梨作りの1年の流れをお伝えします。

加藤農園の梨づくり1年の流れ

■梨の育て方|栽培のコツや肥料、水やりは?難易度は高い?
梨は、日本で最も古くから栽培されている果物の1つといわれています。決して育てやすいフルーツではありませんが、雪のような白い花と水分たっぷりの実は、手間をかけても楽しみたい不思議な魅力をもっています。今回は、そんな梨の栽培について、加藤農園の育て方のポイントや剪定の方法などをご紹介し、お客様のお口に入る梨たちがとっても大切に育てていて安心・安全・美味ということを自信をもってお知らせします。

■梨はどうやって成るの?

受粉しやすい品種を選んで2品種以上の木を植え、花が咲いたら受粉をすると確実に実が成り、収穫できるようになります。90年以上前から加藤家では、コツコツ、こつこつ、励んでおります。

■苗植え

梨を召し上がるまで、梨の苗木を植えてから約10年で、市場に出回る大きさに成長します。
桃栗3年柿8年とことわざにもありますが皆様のお口に入るまでには約10年位かかります。

STEP1 1

梨を召し上がるまで、梨の苗木を植えてから約10年で、市場に出回る大きさに成長します。

まず、庭先に販売されている苗木を植えます。苗木の大きさにもよりますが、1年目で約1m50㎝位に成長します。苗木はほぼ毎日水やりが必要です。また、寒さにも弱いので、冬には藁で保温もします。

STEP1 2

3年目でやっと梨畑へデビューします。

1年1m50㎝、2年2m50㎝。3年目でやっと梨畑へデビューします。自家の庭先で毎日毎日、水やりをし、暑い夏も寒い冬にも耐えて、生き残った苗をやっと梨畑へと植え替えができます。まだまだ小さい苗木なので竹で支えながら成長を見守りたいと思います。

さて、さて。梨園に植えてから数年がたち、ある年の1月から順を追って見てみましょう。
  
(1)剪定・誘引・接ぎ木(1月~2月)
  

 
1月2月は寒む~いですね。この時期は剪定の本番です。
剪定の適期は、葉っぱが枯れ落ちている12~2月頃です。前の年に伸びたよい枝や10cm以下の短い枝は残し、伸びすぎた枝や混み合った枝を、先端から2~3芽のところで切ってきます。剪定をした後は、枝の切り口に保護剤を塗っておくと病気にかかる心配が少なくすみます。
この寒い冬に木が寝ている間に木の剪定を行います。
 

剪定作業とは、余分な枝や芽をのこぎり、はさみを使って切り取る作業です。

木が高くなると作業がしにくくなったり、枝の先に養分が届きにくくなるので実が小さくなります。それを防ぐために上の方へ伸びていく枝を切り、残った枝どうしが重ならないよう枝を曲げて、棚を作っていきます。

剪定・誘引・接ぎ木は、長年の経験と最新の情報を基に選定を行っております(作業には約3ヶ月じっくり要します。)

木も年月を重ねてると、1本の木の半分は寝ていたり(実を付けない)とか、寒さに耐えられなかったり、1本1本丁寧に木の状態に合わせて剪定。様々な本に梨棚の方法がありますが、教科書通りにはなかなか行きません

(2)摘蕾・敷き藁(3月)

3月に入りますと、だんだんと芽がふくらみ始めます。この時期には1本の木にどのくらいの花が咲くのかが、だいたいわかります。その時期に良い葉が出来るための準備をします。

摘蕾 長年の経験から蕾ツボミを取り、栄養を集中させます。

木の大きさによっても花の量も変わります。ここで摘蕾という作業を始めます。1本の木にどのくらい花を咲かせたら良いのかを考え、それ以外の蕾を全て取り除きます。木に力を蓄え、よい葉が出来る準備です。

敷き藁ワラ 梨のために天然ジュウタンを心を込めて敷き詰めます。

梨棚を補修し終わった後に梨畑の土の上に藁をキレイに敷き詰めます。土壌の水分の蒸発を防ぎ、土の温度を一定に保ち、土の中の土壌を活性化させて、梨の果実を実らせるための大地の循環・恵みを整えます。

(3) 花粉つけ(3月下旬~4月)

4月初旬から中旬にかけて畑一面じゅうたんのように、白い可憐な花が咲きほこります。梨は、リンゴやイチゴとともにバラ科の果物の代表格です。いずれも品種改良により種類が豊富なことがバラ科の果物の特徴になります。梨が実を付けるには、受粉がかかせません。90年前には2品種以上の木を植えてきました。
梨の品種のほとんどは、同品種同士では、結実しない「自家不和合性」なのです。そのために受粉専用の梨の木を植えてあります。

◆貴重な花粉の採取。

花粉の採取は、梨の栽培にとってとても大事な作業です。自家のかご1杯の花の蕾からとれる花粉の量はわずか3g程度です。梨農家にとって花粉はとても貴重なものです。

1) つぼみを朝摘みます
2) 花の軸などが混ざっているので更に余計なものを取り除きます
3) 花と葯を別ける。専用の機械に入れて葯だけを別けます
4) 葯をトレイに敷きつめます
5) 開葯機という機械に入れて、30度前後の温度で24時間加温します
6) 葯が開き、黄色の花粉が採取できます。

このような作業をほぼ毎日(晴天のみ)かかさず受粉専用の梨の木の花が黒くなるまでしています。

花粉と石松子を混ぜ、受粉の準備

加藤農園では、自家採取の花粉のみ、受粉を行います。花粉の1個体は裸眼ではほとんど見えない位小さなものです。「石松子」という花粉増量剤に混ぜて、目に見えるようにピンク色にします。

受粉 一花づつ丁寧な人工授粉で確実に実を付けます

晴れた日の朝に花粉の付いた花を摘み取り、柱頭に軽くこすりつける作業を数日おきに繰り返し行います。確実に1つ1つの花に花粉を届けることがとても大事な事。受粉作業の時に花にうすピンク色に染まります。

受粉のコツ 5つの柱頭すべてに受粉しないと梨の形がイビツになってしまう

花びらの枚数はほとんどの種類で5枚、めしべの先に柱頭が5つ、めしべのまわりにおしべが約20本ありますが、幸水は10枚位の花びらを付けます。種類によって形や色、大きさに違いがあります。

受粉の必須アイテム「梵天」※通称:耳かき

2週間程度かけて花1つずつに梵天(綿棒・耳かき)を使って3回程度受粉させます。良く晴れた日、気温15℃以上になる日が結実しやすい日とされ、春の穏やかな日に受粉させていきます。

梨の花が満開!加藤農園の梨園は、梨畑一面白色のジュータン

梨の花の蕾は日々少しづつ膨らみますが、木によって満開の時期が多少ズレています。そのために花が咲いた木から順番に受粉します。
梨の花は1つの蕾から6~10花位の花を付け、うす~いピンク色です。品種によりほぼ白色に見えます。

加藤農園の長寿という品種の花は花の中心に近い所は、赤に近い濃いピンクで、花びらの先に向かって薄くなっています。小さなカレンな花です。
私の感想ですが、幸水はうすいピンク色で凛とした、主張を持っていて、「私は幸水よ!」と言っているような気がします。
豊水梨の花は、元気一杯で、蕾の膨らみが早いせいか「私のきれいな花を見て」と言わんばかりに一気に咲き始めます。

梨の花が終わると梨畑一面白色のジュータンになります。

摘蕾から始まって、1本の木に約3万~5万も梨の花が見事に咲きほころりました。
受粉を行い、約2万個の結実に摘果に摘果を重ねて、1本の木に 約200個まで選別します。(全花数・結実の約3%)

梨の花満開で一面白いジュータン。

1本の木に約3万~5万も梨の花が見事に咲き誇る

(4) 摘果 (5月)

花も咲き終わり、花粉つけをした花が実に成り始めます。5月~7月中旬ころまで、摘果を行います。
摘果は1花房あたり、実が1つになる事の作業工程の1つです。
結実した実と実の間を一定間隔に保つため、手で花がある所を取る。この時、“じく” になる所は取らない。
ここから葉が育っていく。(摘蕾の時に見落としたものなどをよく見ていく)
この時ハサミで結実した実を1つにしていく。
梨の木についた実を全て大きくしてしまうと、ブドウの房の様に実が小さく、食べられません。
1花に1つ全栄養分を集中させて、大きく育てていきます。この時いびつな実は必ず取り除きます。
この小さい実が、そのままの形で大きくなるからです。いびつな小さな実は、いびつのまま大きくなります。
実が小さくても、大きく正品になった事を考え、瞬時に“どの実が良いか”を見極める目が必要です。

枝に近い方から1番果、2番果、3番果・・・と言います。
3番果~5番果の1果を残すのが理想的です。

摘果

1花に1つ全栄養分を集中させて、大きく育てる大切な工程。瞬時に“どの実が良いか”を見極める目が必要。

(5) 害虫・害鳥駆除・除草(5月~)

収穫前のこの頃は、気温が日に日に高まり、虫も活発になり、防害虫にもより一層の目くばりが必要です。梨は病害虫の多い果樹です。虫が出始める3月頃より予防のための薬剤散布から始まり、月に3回程度、防除暦を参考にしながら収穫前まで進めています。気温が上昇するにつれ、カメムシや葉ダニ(アブラムシ・カイガラ)など、そして、6月の梅雨時期には黒星病など様々な病気や害虫から梨を守るために散布しています。また、この時期には除草作業も必要です。梨の木が成長する事は、雑草にとっても同じことです。この時、除草もしっかりします。土の中の栄養分は雑草も食べるので、より早く取り除き、梨に栄養が行き渡るように頑張っています。

害虫・害鳥駆除・除草

朝日が昇る前から作業します。
この日々の積み重ねによって、まるで我が子を育てるようにやさしく育てていきます。

害虫・害鳥駆除・除草 その2

様々な駆除剤を駆使し、おいしい梨を作ります。

◆ネット網張り+棚仕立て

さて、さて、段々実が大きく成ってきました。空から園を見ると実が見えています。カラスやムク鳥から実を守るため、梨園にネットを張る作業を行います。以前は梨園全体に1枚の網をかけていましたが、今は、1本の木にそれぞれ、覆いかぶせるようにかけていきます。土から棚仕立て(剪定で説明有り)の位置まで約1m50cm前後。棚仕立てから、支柱の上まで約約1m50cm前後。棚付けの張りは、約30㎝~50㎝間隔で四方に広がり、その間を人が網かけをする作業です。園全体が網にかかるように木が無くても、隙間を埋めていきます。10㎝~15㎝の穴が開いているだけで鳥は入ってきます。梨の支柱上部から梨の木を支えるために、ワイヤーが放射状に張り巡らせてあるので、棒を使いながら2人がかりで作業します。日々梨は成長していますので、鳥と人間と追いかけっこの様な感じです。梨の実1つ1つに袋をかけるという方法もありますが、加藤農園では、直射日光を浴びて糖度が上がる方法をとっています。ですので鳥にはこの上ないご馳走です。

棚仕立て 

鳥と人間と追いかけっこ。
負けてられません。

(6) 7月

何度も何度も摘果をし、病気や害虫・害鳥に気を付けて、梅雨時期の雨量を気にしながらの作業でした。梅雨時期の雨量が足りない時には、田んぼに流れている水を引いて冠水作業をします。年によって自然の雨量だけでは足りないので、人工的に水分補給します。田んぼに流れ入る水は、酒匂川より流れてきます。この地域は、小田原黒めだかの生息地でもあり、神奈川県という場所にありながら自然豊かな土地でもあります。

ここで田んぼの話を少しさせてください。

田んぼ編 ~春~
ちょっとひと息田んぼの話です。加藤農園では、少しですが、稲作りもしています。春、田んぼに田おこしのため、トラクターにて耕運をします。土の中がかき回され、下の土が、上になり、陽を浴びます。4月下旬に苗床を作ります。まず、土は半年間日光をあびて、乾燥させておきます。その土を大きめの2cm各位のふるいにかけます。全部終了後、もう一度細めのふるいにかけます。この出来上がりの土に肥料を混ぜ合わせ、苗箱の底の土となります。その上に種子を捲き、土を上からかぶせます。この苗作りを専用の機械で流れ作業で作っています。
①まずはじめに土を入れておきます。 ②その箱を機械に乗せると自動に動き、最後まで流れると自動的に出来上がります。簡単に感じられますが、これが人数も5~6人必要でそれぞれの分担と配置が必要です。 ③土・種子は、人の手により足していきます。また、箱を入れる人、取り受ける人、その後保温機に入れる人など図では表しきれない人数と手間がかかります。 ④保温機に3日間、温度と湿度を保ちながら、発芽を待ちます。 ⑤3日間経つと2~3cmの白い芽が出ます。芽が出ることが大事なのです。 ⑥保温機の工程が終了しますと1枚1枚庭先に並べていきます。ビニールシートの上に1枚1枚並べて、水をたっぷりかけます。 ⑦この後、育苗シートをかけ温室状況をつくり、約1週間位中の様子を見ながら、成長を観察します。この時点で先の天気を読みながら、シートをはがしていきます。 ⑧約5~7cmに育ったキレイな緑色になった苗の出来上がりです。これから田植えをするまで、毎日朝夕の水かけをします。

◆しろかき◆
苗は20日苗(はつかなえ)と言われ、種まきから20日後に田植えが出来ると言われています。田んぼに水が入り始め、トラクターが田んぼに入り「しろかき」という作業です。苗を植えるため、田んぼの底を平らにする作業です。これがトラクターを運転する人の腕の見せ所です。トラクターが田んぼの底を平らにするのは、田植え機が入って田植えをスムーズにするためです。苗の大きさは決まっています。また、水を張る水面はほぼ一緒ですので、そこがデコボコになると、右図の様に水面から苗が出る所は育ち、水面から出ない所は枯れてしまいます。

◆田植え◆
さあ、田植え機に苗を積んで田植えをしましょう。この時に肥料と除草剤も一緒に田植え機が撒いてくれるので大助かりです。後は、収穫まで毎朝の水の管理をしっかりします。この地域の田んぼに流れる水は、富士・箱根・丹沢山系を水源とする酒匂川の伏流水が田んぼを潤し、絶滅危惧種の野生の黒メダカと共存しながらおいしいお米を育てていきます。このお米作りから出来た藁を梨作りにも使用し、加藤農園は、自然の恵みをいただきながら梨とお米を作っております。

稲の苗箱 田植え機に苗を積んで田植え

お米作りから出来た藁を梨作りにも使用

鎌倉時代から一等級。神奈川県で唯一の野生の黒メダカの生息地。お水が豊でキレイな証拠です。

7月が一番実のサイズが急激にグングン大きくなります

(7) 収穫 (7月下旬~8月~9月)

実が大きくなり、収穫時期となります。甘い香りが園中に広がり、カブトムシが梨に付いてガサガサと音を立てています。いつも50匹位までは数えていますが、それ以上数えることをあきらめています。夜光虫なので網にひっかかっている者もいます。何度も消毒を重ねておりますがカブトムシも元気に育っていますので安心してお召し上がりいただけます。この8月は、台風シーズンでもあります。梨の実が成長すると軸が外れやすくなります。少しの風でも揺れると果実が落ちてしまいます。そのため、園の外側一周に防風網という網を張っておきます。直接の風が当たらないような工夫はしてありますが、大自然の中ですので、人間の思うようにはいきません。やっと大きくなった実も台風にはかないません。落ちない事を祈るばかりです。(落ちた梨は、害虫・害鳥が集まる原因となりますのでその日のうちに拾い処分します。)さあ、収穫が始まります。

いよいよ収穫です!今年の成果はどうかな~?

木の上で丸々と成長した我が子を見るととても誇らしく、そしてとても輝いて見えます!

一年を振り返りながら収穫します

思わず、「取ったど~!」と叫びたくなりますね。

明水(あけみず)

一番初めに明水(あけみず)という品種が出てきます。「あけみず」は「幸水」の前に収穫される早生品種です。
果肉は柔らかく、とてもジューシーです。平均サイズは、約300g~400g。

この品種は,「新水」に「42-6」(雲井×幸水)を交配して得られた交雑実生から選抜・育成さではれたものであり、果形が円で果皮色が黄赤褐。甘味はやや高く、7月下旬~8月上旬に成熟する「赤なし」です。樹姿は中間。樹の大きさは大きく樹勢は強い。枝梢の太さは太く、節間長い。皮目の大きさは多少で短果枝の着生及び花芽の着生は中程です。果実の大きさは全国の梨の中では平均サイズ(320g程度)。果肉の色はやや黄白、硬さ及び粗密度は中くらい。甘味はやや高(糖度13度前後)。酸味は中で香気は少。果汁の多少はやや多です。開花期と成熟期はかなり早く、育成地において7月下旬~8月上旬である。心腐れ,みつ症状及び裂果は少なく、果実の貯蔵性は短いです。  明水の収穫は、約7日間。この期間に全ての明水を収穫します。

長寿(ちょうじゅ)

明水が出始めると、すぐに長寿(ちょうじゅ)が出てきます。神奈川県生まれの極早生の「赤なし」です。8月のお盆時期まで収穫ができます。神奈川県西部では、昔からお盆に多く用いられてきました。2~3日日持ちがするので、お飾りに多く用いられました。味はタンパクであっさりとした感じに思われます。 長寿の収穫期間は約10日間で、全て収穫します。いっきに続々と出始めます。愛甘水・香麗 の2品種は同時期に出ます。

愛甘水(あいかんすい) 糖度があり甘い品種

愛甘水は平成になってから品種登録された比較的新しい品種です。
「愛甘水梨」は昭和50年代に、「長寿」に「多摩」を交配して得られた実生を接木して結実したもので、以後、試作と改良を重ねることによってできた梨です。果実の大きさは中玉(300~350g)となります。梨は秋だけではありません。愛甘水は梨の中でも早く収穫される早生品種で、幸水より15日ほど早く収穫することができ、収穫期は8月上旬から8月中旬までとなります。お盆前に出荷の最盛期を迎えるので、お中元やお盆のお供え物にもお遣いいただけます。また、愛甘水は真夏に食べることができるので、夏の食後のデザート、水分補給にも最適です。愛甘水梨は最近人気が出てきました。味は幸水に似ています。幸水と同じくらい甘味があり、しっかりとした歯ざわりなので、近年、非常に人気が出てきた梨のひとつです。真夏に梨が食べられる果汁たっぷりのシャキシャキの新食感です。

香麗(こうれい) 1本のみ栽培 神奈川県西部では出荷し始めて3年の幻のブランド

市場にはまだまだ出回らない希少な梨です。この品種が出はじめて3年という短さで、まだ名前も知らない方も多いのではないでしょうか。私の感想ですが、酸味・甘味に梨のコクがうまく調和して新しい味に仕上がっていると思います。私はとても大好きです。

早生・大玉のニホンナシ新品種「香麗」
神奈川県産の梨の販売方法は直売や宅配がほとんどで、完熟の美味しい果実を販売できる特徴があります。直売では販売期間が長いほうが有利になりますが、「幸水」よりも早く収穫できる極早生の優良品種がありませんでした。そこで‘幸水’よりも早く収穫できる大玉で品質良好な赤ナシ新品種「香麗(こうれい)」を育成しました。神奈川県においてナシは「幸水」、「豊水」を主要品種として、都市農業の利点を活かした直売や贈答用宅配を中心に販売されています。経営のさらなる安定のためには販売期間の前進拡大と旧盆前の贈答用需要への対応が課題となっていますが、既存の早生品種の導入はあまり進んでいません。そこで、神奈川県農業技術センターではこれらの課題に対応できる早生・大玉の新品種育成に取り組み、「幸水」より早く収穫できる早生の赤ナシ新品種「香麗(こうれい)」及び「なつみず」を育成しました。

幸水(こうすい) 一番甘い。梨の女王

販売時期目安 : 8月上旬~9月上旬頃迄
ナシ農林3号。交配番号キ-26。昭和16年に当時の農林省園芸試験場(静岡県興津町)で交配した「菊水×早生幸蔵」の交雑実生の1つです。昭和22年初結実、同年に各試験場に苗木または穂木として配布し、地方適否、特性検定試験を行ってきました。その結果、品質的に優れた特徴のある品種として農林省農業技術研究所園芸部において昭和34年3月に「幸水」として命名され発表されました。誰もが美味しいと言って頂ける代表的な梨です。当園では、8月の中旬ごろから8月下旬まで約2週間に収穫を行います。園の中へ収穫に行ってみましょう。木に成っている幸水梨を見てみると、青い感じ(若い実)に見えるものから、茶色が陽に当たり、透き通る様に黄味がかかって見えるもの同じ木に成っています。大きさも大小様々です。人間も大柄な人もいれば小さい人もいます。梨も小さいからと言って育ちが遅いというわけではありません。梨の色やツヤ、個体の熟し具合を見て収穫していきます。長年培ってきた目と企業秘密をプラスして、お口に入る時に最高の状態になる様収穫していきます。

◆収穫・出荷作業

梨の収穫はまず目で見極めて、収穫する梨を手に持ち、そのまま2~3cm上に持ち上げます。そのようにすると梨が木の枝から自然に別れます。これは実が完全に熟している時の収穫風景です。その後、軸を切り、収穫カゴに入れていきます。梨はころがると、そのまま中が傷になりますので、なるべく動かないよう、静かに取り扱います。ちなみに未完塾の梨は持ち上げても木から外れません。収穫した実はすぐに自宅作業場所に持ち帰ります。

出荷作業
加藤農園では、サイズ別に約10段階に分けていきます。この時、大きさにより梨の出荷先が異なります。そして1つ1つの梨の品質を細かくよく見ていきます。この時、花が咲く所、おしりの所で梨の中の状態を見ていきます。梨の健康診断です。果物屋さんでよくおしりの部分を見せて売っていますね。それはこの商品は“とても良いものです”という自信の陳列方法の1つです。梨を手に取り梨の中の状態をみていき、外側にも傷はないか?また梨全体の体形が整っているか?梨全体の色はうまくそろっているか?人間の五感で感じるもので判断しています。人間ですので間違いもあります。故意ではないので、“猿も木から落ちた”と思ってくれるとありがたいです。ここでもまた品質により行き先が異なります。この様に何度も振り分け、振り分けされてから、箱に入り、出荷されていきます。このように1日で朝収穫をして、選別をして、出荷用に箱詰めし、出荷します。お手元に届いた時には、とても新鮮で瑞々しい状態でお届けします。私たちは梨を鮮魚と同様に考えています。時間と共に鮮度が失われますので、木で完熟した美味しさをそのまま早くお届けできたらと思っております。加藤農園の幸水梨の実はほとんど300g前後ですが、中には1個500g位まで成長するものもあります。幸水は、特別大きな品種ではないので大きいものはとても貴重と言えます。

一つひとつ丁寧に傷がつかないように収穫します

ここまで大きく育ってくれたことに感謝。自然の恵みに感謝です。

収穫した後は小屋に並べ識別します

朝収穫して、すぐに選別します。郵送と店頭販売に分けていきます。

糖度計14%を計測。甘いですね。

加藤農園梨は糖度〇%以上!と言いたいのですが、まだ完全に言い切れず研究中です。

郵送準備

お客様の口に入る瞬間が一番美味しい熟成梨をどうぞ!

スーパーに直接陳列し、店頭販売

お客様が待っている中、自ら陳列。ひとつひとつキレイに並べてさあ、どうぞ!

(8) 8月下旬~9月中旬
豊水(ほうすい) サイズが大きく、瑞々しい。

販売時期目安 : 8月下旬~9月下旬頃迄
甘さと酸味の芳醇な味わい!1954年「幸水」×「石井早生×二十世紀」の交雑によって生まれた中生種。果肉がやわらかくてみずみずしく、幸水に次ぐ生産量を誇ります。まん丸い実は、美しい黄金色をしています。花も大きいので観賞価値が高く、家庭での栽培にもおすすめです。豊水梨は幸水梨の次に収穫される赤梨で、果実は400gぐらいがほとんどです。幸水梨より日持ちが良く、果肉はやわらかめ。甘みの中に適度な酸味があります。もぎたての豊水は酸味が多めです。しかし、この酸味を味わえるのはほんのわずか1日位なのです。超新鮮のあかしと思ってください。この酸味があるから梨本来持っている甘さと交わり、より一層のうまみを感じる事となります。加藤農園では、豊水梨は約3週間位で収穫を終了します。終盤に近づくと梨の実もより一層の大きさも増します。昨年では1実1100gという大きな梨が出来ました。この重量を梨の茎1本で支えていると思うと感動です。 より良い環境がここまで育ててくれたと思います。盛暑よりも少し陽ざしがやわらぐ終盤のこの頃、豊水梨も木の上で熟すと共に酸味が抜け、糖度もより一層上がってきます。実もとてもやわらかくなります。これは農家のごほうび梨です。最後までよく木に付いていてくれたと感謝を込めていただきます。

田んぼのお話「秋編」

田んぼ「秋編」
秋になり、お米の収穫です。春に田植えをしてから、毎朝、水の管理をし、ヒエ取り(雑草とり)のために田んぼに入ります。夏の直射日光は、体にはとてもキツイものがあります。朝日が出る少し前の4時頃から田んぼに入ります。これは体を守るためです。まだ涼しいうちに作業を始めています。9月に入ると、水を止めて土を乾燥させます。稲穂も乾燥させていきます。お米が黄金色に輝き出す9月下旬より、コンバインで刈取ります。稲穂をコンバインで刈り取るとお米(もみ殻付)と藁とに分けられて機械から出てきます。お米のもみがら付きは、いったんコンバインの中にためる所に入ります。藁は刈り取った時に結束されて、コンバイン後方部より出てきます。コンバインにためた所がいっぱいになると、運搬車に太いノズルを使って移し変えます。そしてお米は自宅にあるお米専用乾燥機に入ります。地域によっては天日干しをされている所もあります。加藤農園では、お米乾燥を13.5~15.5にムラなくするために乾燥機を使用しています。また、天日干しの仕方により人員が少なくて済みます。乾燥が仕上がって「カラウス」という機械を通って玄米となります。この時、もみ殻付のお米が、もみ殻と玄米との分ける機械を「カラウス」と言います。玄米になり初めて米袋に入ります。玄米は30kgの米袋に入り、流通されていきます。自家出荷のお米を加藤農園では、米専用の冷蔵貯蔵庫に入れ、1年間管理をしています。

さあ、玄米を精米していきます。精米機に入れるとお米とヌカに分かれます。この時のヌカは、ヌカみそ漬けとかに使用するあのヌカです。とても栄養があるので梨の畑にも撒きます。さあ、新米を炊いて、召し上がってください。新米は水分が多いので、少し水加減を少なくすると上手にできます。お米の収穫時にコンバインから、藁が出て、田んぼに置き去りになっています。田んぼに横たわっている藁を4~5束を上記の様に立てて風通しを良くします。約1ヶ月乾燥させます。この乾燥した藁を1カ所に集めて春まで保存です。この藁が梨畑の敷き藁となります。

お米が黄金色に輝き出した時、収穫の合図です

コンバインで収穫

この藁が梨畑の敷き藁となります

加藤農園の稲作お米作り。新米はやっぱり美味しい。

(9) 終わりと始まり(10月~12月)

新興しんこう 10月上旬ラグビーボール型。

新興梨は新潟で生まれて新潟で育った梨です。和梨で加藤農園では最後に収穫される新興。大きさは400g~500gくらいで、果皮の見た目が非常によく、 酸味と甘味のバランスが整っているのが特徴です。今までに召し上がってきた梨とは味も食感も全て異なる梨だと思います。一言で言ったらりんごのような食感をもった梨と我が家の中では話をしています。この新興はとれたてはもちろん瑞々しいのですが、酸味もあるおかげで長期保存(条件にもよります)涼しい所に置いておけば約1ヶ月近くはもちます。また、冷蔵庫での保存で、自家ではお正月にいただきます。自家園で栽培している新興梨は、ラグビーボールに似たような、縦長の型が多く見られます。これはこの品種の特長なのか、自家受粉のために、このような形になるのかはわかりません。あまり、この地域でも出回らない品種です。もしどこかで出逢いましたら召し上がってみてください。

「お礼肥(おれいひ・お礼の肥料)」 11月

段々と寒くなる本日です。収穫が終わってほっと一息。とはいかないのが農業です。収穫後の梨の木は、やせ細っています。お礼の意味も込めて「お礼肥(おれいひ)」をします。お礼の肥料です。暑い夏を乗り越え、台風の強風にも耐えて、収穫が出来た事「ありがとうございます」と1本1本すみずみに、お礼の肥料をしていきます。

ここでちょっと、どうやって撒くの?の疑問に答えて、運搬車に肥料を乗せて、1本1本の木の大きさに合わせ、肥料をはかりで計量してから手でとりながらまきます。万遍に行き渡るように撒きます。梨園に落ち葉が散り始めてきました。毎日竹ぼうきでかき集め、ゴミとして処理します。春芽吹いた葉が今まで成っているので、1枚の葉に害虫の卵・病気の菌など様々なものを葉に付けて残しています。(病・害虫も生き残るためです)このような落ち葉は翌年のためによくありませんですので1枚残らず、という気持ちで毎日はいています。(全部一緒に落ちてくれると楽ですね(笑))ほぼ毎日、毎日、風に舞う落ち葉との格闘です。

そして春に張った網を取り外していきます。張った網はこれから降るかもしれない雪に備えて外していきます。1本の糸は細いですが、ここに雪が積もります。やがて支柱と支柱の間に雪が積もり重さで支柱を曲げる事になります。梨園全体が一瞬でつぶれる事になります。なので、備えをしっかりします。農家に“めんどくさい”はありません。命とりになります。

剪定作業  12月

そろそろ木の葉が全部落ちた頃から12月、1月、2月と剪定が始まります。剪定作業とは、余分な枝や芽をのこぎり、はさみを使って切り取る作業です。間伐もしながら、梨棚も補修します。この時期にいわゆる土台や屋台骨を強くする作業が来年の収穫に大きく繋がってきます。梨園の多くは「棚仕立て」という方法で、梨を育てています。当園もそうです。本来梨の木を植えたままにしておくと、上へ上へと延びて行きます。ですので、棚仕立てという方法です。梨棚に春から延びた枝を棚にあわせ、曲げて、麻ヒモで縛る作業です。(誘引)(当園では麻ヒモ使用)また来年に実がならない枝も切り落とします。十分に日光が当たるように、また枝と枝が重ならない様剪定と誘引を繰り返していきます。また、切った枝の切り口よりバイ菌・病気が入らない様、ペーストを筆で塗っていきます。2~3日すると膜が出来、保護されます。寒い中、我々の手もかじかみます。でも寒さが梨には必要なのです。寒い事で梨の木が休息しています。春の芽吹きが良くなるためです。寒くならないと冬を感じずに、春の時、めざめが悪くなります。

春前の2月頃

本格的に肥料をあげます。土壌診断をして、足りない肥料と、そしてこれから必要な肥料をあげていきます。この時、加藤農園では、有機栽培の肥料を撒きます。食する時の安心安全のため、また、美味しいと感じるためです。私たちが美味しいと感じるには、梨の木にも十分な肥料をあげ、なおかつ健康に育つために必要です。お礼肥と同様、肥料を計りにかけて、1本1本に合った分量を手でまいていきます。肥料の機械散布という方法もありますが、加藤農園では、木の根を傷付ける事無くまた、すみの端までいきわたる様に手で撒きます。やはり丁寧な仕事は、全てにつながると思います。

おまけ

私たちが、この作業をしていることを書いてみて、まだまだ色々な出来事があるなって思います。少しですが、例をあげてみます。良いこともあるのですよ!

① 夏場、朝方3時半頃より消毒に行くと、富士山を見ると、富士山の形に登山客のライトが光って見えるのです。こんな感じかな? 4時には、もう少し明るくなるので、もう見えません。暗闇からの作業です。
② 夏の台風時、大雨の中、カッパを着て、梨畑にいきます。強風のため、風で網が揺れ動き、支柱が倒れそうな所を補強に向かいます。自然との戦いなので、想定外な事です。翌朝には、落ち梨をひろいに行きます。いつもこの時は、がっかりです。
③ 網が少し開いていたせいか、タヌキの親子が落ちた梨を食べていました。子たぬきの食べている姿は見えたのですが、親たぬきは警戒心が強く、子たぬきを見ているだけでした。かわいいですね。

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